浪曲は「和製オペラ」「ひとりミュージカル」とも言われています。

浪曲師が豊かな声量で、登場人物の心情を歌で表現し、また合間にはセリフも入れながら、三味線を伴奏にして物語を進行していきます。そこには落語や講談にはない独特の味わいがあり、何よりもお客様は「ダイナミックな声の力」に圧倒されます。

江戸時代に浪花伊助という人がいろいろな節をまとめ、現在のような形に整えました。大正時代までは浪曲のことを、この人の名前を採って「浪花節」と呼んでいました。

メロディーにのせて歌い上げる部分を「節(ふし)」、語りの部分を「啖呵(たんか)」と呼びます。「一声二節三啖呵」と言われるほど、演者にとって一番重要視されるのは魅力的な良い声です。セリフとメロディーが一体となって、お客様のハートを打ちぬきます。

浪曲は今を生きている大衆芸能です。決して古い芸能ではありません。テレビドラマを見ているように、それぞれの登場人物に共感してみてください。三味線のバックミュージックに乗せて進行する壮大な歌芸の心地よさが、存分に味わえるはずです。

浪曲の舞台セット

  1. 腰ぐらいの高さの小さめのテーブルと「テーブルかけ」

    「テーブルかけ」は、一般的なテーブルクロスではなく、花や動物などそれぞれ演者の個性を表現した美しい布で、相撲の化粧回しのようにファンが浪曲師に送る物であり、送られるテーブルかけには金糸で寄贈者の名前や会社名が記してあります。

  2. 湯のみかけ

    「湯のみかけ」には演者の名前が入ります。

  3. 背もたれの長い椅子と「椅子かけ」

    「椅子かけ」にはそれぞれの流派の家紋が入っています。

  4. 袖かけ

    狭い舞台では置かない場合もあります。

  5. 金屏風

菊地まどか 浪曲の代表的な演題

嫁ぐ日

あらすじ

浪曲初心者向けで、内容も言葉も分かりやすい現代の物語。

頑固な父親は娘が彼を紹介するも猛反対。しかしどんな男か気になって、こっそり働く姿を見に行くと心優しい男と分かり「あの男なら大丈夫」と、娘との結婚を許す決心をするお話。

「嫁ぐ日」関連動画→『嫁ぐ日』

赤垣源蔵・名残の徳利

あらすじ

赤穂義士銘々伝のひとつ。

酒呑みの振りをしていた源蔵は、兄・伊左衛門に最後の別れを告げに徳利酒を下げて会いに行くが折り悪く兄は不在、源蔵は兄の紋服を兄に見立てて一人で別れ酒、徳利を置いて帰ります。深夜帰宅した兄は弟の只ならぬ気配を感じとり一睡も出来ず、翌朝討入りを知ると下僕の市助に見に行かせます。そこに居てたのは見事討入りを果した源蔵、市助に兄への感謝を語る兄弟情愛のお話。

あぁ吉岡先生

あらすじ

昭和9年の室戸台風が大阪(吹田市)の小学校にもたらした実話。

豊津尋常高等小学校の吉岡藤子先生(27才)は普段から生徒一人一人を分け隔てな接していました。折りしも台風真っ只中、大雨と強風の中を登校して来た子供達を助けべく、自身の身体と命とを引き換えに倒壊した校舎から生徒5人を守ったお話。